中国スマホ決済、日本でも、現地市場3割増、200兆円、小売業、訪日客誘う。

  • 2016 年 08 月 26 日

文:日経新聞紙面から


【上海=小高航】中国でスマートフォン(スマホ)を使った電子決済サービスが急拡大し、日本企業に商機を生み出している。2016年の市場規模は前年から3割強増え、円換算で200兆円に迫る勢いだ。世界最大規模になった中国の「スマホ決済圏」は訪日中国人が増える日本にも広がる。中国で主流の簡易型は小規模店舗でも導入しやすく、普及すれば日本のスマホ決済の多様化につながる見通しだ。

中国で一般的な簡易型はスマホの画面に表示される「QRコード」を店頭のタブレットにかざせば利用者の識別がすみ、購入できる。「スイカ」といった専用読み取り機を使う日本で主流の方式に比べると設置コストが少なく、小規模店舗や個人でも導入しやすい。


中国ではクレジットカードによる支払いは少ない。利用額がすぐに銀行口座から引き落とされるデビットカードが普及していた。最近は使いやすさや信頼性の高さ、店舗での導入のしやすさから簡易型のスマホ決済(3面きょうのことば)が急増している。


中国の調査会社、比達咨詢によるとスマホなどの移動端末を使った決済市場は15年に9兆3千億元(約140兆円)。17年は15兆元に増えると見込む。スマホ決済の米大手、スクエアは15年の決済処理額が約3兆6千億円。単純な比較はできないが、中国の規模は群を抜いている。


電子商取引大手アリババ集団の「支付宝(アリペイ)」がシェア72%。騰訊控股(テンセント)の「微信支付(ウィーチャット・ペイメント)」が続く。こうしたインフラに慣れた中国人が大挙して日本を訪れるようになり、両社は日本での扱い店舗を拡大している。


テンセントは16年中に1万店にする方針。狙いは訪日時の利用だけではない。日本企業が帰国後も中国人旅行者を「常連客」にできるようにしている。日本でスマホ決済した中国人に日本企業は帰国後もネット経由で新商品や割引の情報を紹介。通販で売り込める。これまで主流だった「銀聯カード」より一歩進んだサービスといえる。


日本企業も動き始めた。高島屋は日本橋店(東京・中央)や新宿店(東京・渋谷)など大型店でアリペイや微信支付を利用できるようにした。販売単価は下がっているが「客数は今後も伸びる」(高島屋)とみて、利便性を高めて集客する。


ローソンは羽田空港などの9店舗でアリペイを導入。セブン―イレブン・ジャパンは首都圏の数十店舗で試験導入した。ファミリーマートは4店舗で導入を始めた。


今後、日本のスマホ決済の手段が広がりそうだ。ベンチャー企業、オリガミ(東京・港)が始めた読み取り機を使わない仕組みを大手衣料品チェーンが導入した。


リクルートライフスタイル(東京・千代田)はアリペイとLINEペイに対応したアプリを提供しており、ユナイテッドアローズや那覇空港の店舗が採用した。導入のハードルが高かった小型店で普及が進めば、日本でもスマホ決済がより身近になる可能性がある。